防振台 ― ディスクふにゃふにゃシステムとは

ディスクふにゃふにゃシステムは、バランスディスクと合板を組み合わせた自作の防振台です。電子ドラムの最大の問題点である騒音、具体的には、バスペダルなどを踏みつけたときにドンドン響いてしまう振動を緩和することができます。

空気伝搬音と固体伝搬音

電子ドラムを演奏すると、大きく分けて2つの「騒音」が発生します。ひとつは、ゴムシンバルなどを叩いたときに聞こえる物理的な打音(空気伝搬音)であり、もうひとつは、ペダルやドラムラックから振動が床や壁に伝わって聞こえる音(固体伝搬音)です。空気伝搬音は主に耳で感じますが、固体伝搬音は振動そのものを体で感じることもあり、不快度はより高くなります。

ディスクふにゃふにゃシステムを初めとする「防振台」は、後者、つまり固体伝搬音を緩和するためのものです。空気伝搬音に対する防音効果はまったくないので、これが問題になる場合には別の対策が必要になります。あらかじめご了承下さい。

タイヤふにゃふにゃシステム

2006年春、ドラマー向けコミュニティサイト(だった)「DRUMMER JAPAN」の防振・防音対策フォーラムに、a4tq氏による「タイヤふにゃふにゃシステム」というスレッドが立てられました(現在は消失)。

初公開されたタイヤふにゃふにゃシステム(2006年、a4tq氏撮影)

ここで公開されたタイヤふにゃふにゃシステムの最大のポイントは、と、その下に置かれたタイヤチューブです。この画期的な組み合わせの台の上に電子ドラムを置くことで、固体伝搬音をかなり吸収することができました。タイヤチューブは子供用自転車で使われる12インチタイヤ用のチューブが最も効果的でしたが、これがなかなか入手しづらく、私も複数の自転車専門店をハシゴして買い漁ったものです。

私が初めてタイヤふにゃふにゃシステムを作成したとき(2007年)の写真を上げておきます。

バスマット2枚の上に12/14インチタイヤチューブ5本を配置
当時はYAMAHA DTXver2.0を使用していました

タイヤふにゃふにゃシステムの欠点

タイヤふにゃふにゃシステムは、2007年から2011年まで、4年半ほど使っていました。その頃には、タイヤふにゃふにゃシステムの便利さとともに、このシステムの欠点も見えていました。

タイヤふにゃふにゃシステムの最大の欠点は、定期的にパンクすることと、それに伴う面倒な交換作業を避けられないことでした。本来はタイヤゴムに包まれて強度を保つはずのタイヤチューブをむき出しで置き、圧力をかけ、さらに演奏中は揺さぶり続けるという性質上、パンクはある程度仕方のないことでした。

圧力に負けてヒビが入りパンクしたチューブ
当時の私の愚痴

特に、臭いがひどかったです。パンクしたタイヤチューブの中から抜ける空気はかなりの異臭であり、チューブを触った手には(軍手越しでも)耐えがたいゴムの臭いがずっとこびりついていました。

ディスクふにゃふにゃシステムへ

タイヤチューブに代わる素材はないかと、色々と考えました。振動を抑えるには、コンクリや鉛などのくそ重たい(=揺れない)物質か、または「空気」か「水」を挟むこと、と学びました。エアーベッドが最強に見えましたが、置き場所の制限のため諦めました。

エアークッションなどをキーワードとしてYouTubeで行き着いた結果は、バランスディスクでした。

当時の私のブログから

試しに1枚だけ購入し、タイヤチューブと比較するための振動実験を行いました。

振動計アプリなんてなかった当時の最新測定機器を様々な角度で
結果、タイヤチューブと同等の性能を示した

この結果を踏まえて、バランスディスクを追加で購入し、2011年9月、いよいよ「ディスクふにゃふにゃシステム」を作ることになりました。システム自体は構築済みだったので、タイヤチューブをバランスディスクに交換するだけの作業でしたが。

タイヤチューブの代わりにバランスディスクを配置

この頃にはドラムキットが YAMAHA DTX v2.0 から Roland TD-12KVS に変わっていたので、DTX v2.0 に合わせたサイズでは幅が狭くなってしまいました。ラック(Roland MDS-12)がきわっきわです。その後、スネアもフロアタムも12インチパッドに変え、さらにバスもツインペダルにしたので、さらにきわきわになりました。この時点で、合板にかかっているドラムの重量は50kgほどでした。

この状態で使用すること12年と4ヶ月。
2024年1月に、サイズを広げた新しいディスクふにゃふにゃシステムを作成しました。快適です。

ディスクふにゃふにゃシステムの作り方

材料と構成

基本はバランスディスクですが、私はそれにお風呂マットカーペットを追加しています。
板とディスク以外は各自のお好みでどうぞ。
イス(スローン)は乗せない前提であることにご注意下さい。

  • 風呂マット:部屋がフローリングなので、防振台ごとずるずる引きずって移動できるように最下部に敷いたものです。
  • バランスディスク:ポンプが不要で、最初から空気の入ったものを通販で調達。1つで耐荷重100kg以上ある製品で、直径大きめのものがお勧めです。
  • 合板:サブロクサイズのラワン合板(910×1820mm、厚さ12mm)をホームセンターで調達し、その場で店員に910×1700mmにカットしてもらいました。
    屋内で使うため、合板はホルムアルデヒド放散量が「F☆☆☆」(F4)のものを選ぶと安全です(明示されていない場合は、店舗の屋内に展示されているものを選ぶのが無難です)。いわゆる「コンパネ」は、屋外利用を想定したF☆~F☆☆☆のものが多いので注意してください。
  • パンチカーペット:素のままだと素っ気ないので、合板の両面に貼りました。
    現在使っているキックパッド Roland KD-10 の裏には標準でマジックテープが付いているため、パンチカーペットにもがっちり食い込み、激しくキックしてもずり下がっていくことはありません。

構築ドキュメント2024.01

1. 調達編

2024年1月某日、幅の広いディスクふにゃふにゃシステムを新しく作るべく、木材の在庫が豊富なホームセンターに向かいました。
なお、バランスディスクは再利用するので今回は調達しません。

この合板を1枚購入しました。サイズはサブロク(1820×910mm)、厚さは今のものと同じく12mmです。「F4」の明記があることも忘れず確認。
レジで合板の購入と共にカットをお願いし、店員さんに 1700×910mm にカットしてもらいました。1カット33円でした。(木材カット無料クーポンがあったことに後から気付いた……)

バスマットは、ジャンボサイズのもの(850×1200mm)を2枚買いました。
2枚合わせて、ふつうのバスマット(850×600mm)の4枚分です。

コーナンのジャンボEVA JS21-1154。これを2セット購入

パンチカーペットは、幅910mmの切り売りカーペットを1700mmで2セット購入しました。合板の両面にそれぞれ貼って、リバーシブルにします。

そのほか、アルミテープと両面テープも買いました。

2. 構築編

まずは、既存のディスクふにゃふにゃシステムからドラムを一時撤去します。

新旧の合板の大きさを比較してみます。
横に50cm、奥行きが6cm広がりました。

新合板と新バスマットの位置合わせをします。

はみ出したバスマットをちゃっちゃと切断します。

合板の周囲四辺を、アルミテープで補修します。
今回はカットも1辺だけであり、(前回とは異なり)かなりきれいにカットしてくれたので必要ないかとは思いましたが、一応ささくれ防止の為もあって貼りました。

続いて、合板の両面にパンチカーペットを貼ります。

パンチカーペットは少し大きめに売られているので、はみ出した分はカッターで切り落とします。これがまたなっかなか切れないので、この作業に2時間以上かかりました。さらにパンチカーペットの場合、切り取った部分は繊維でもじゃもじゃになるので、バリカンなどで刈り取り、整えておきます。

これでだいたい完成です。
あとはこれらにバランスディスクを挟むだけ、だったのですが……。

毎年掃除のたびにバランスディスクの状態を確認しているので今回も確認してみたのですが、どうやら、12年かけてバランスディスクの空気が少しずつ抜けてきていたようです。今まで気付かなかった。

パンクではないのでこのまま放置してても問題はなさそうですが、せっかくの機会なので、ドラムを乗せる前にバランスディスクの空気を補充しておきたくなりました。
しかし、これらのバランスディスクはもともとポンプの付属しない製品だったのです。

結局、もう一度ホームセンターに戻り、たまたま売ってたポンプ付きのバランスディスクを1枚買ってきました。一般的な(ボールなど用の)ポンプだけで良かったのですが、台が広くなったので6枚体制にしたいところでもあったので、ディスクごと買いました。

すべてのバランスディスクについて、空気圧を「うまく片足立ちすれば床に接触しない程度」(買った当時と同じ)に戻し、追加で買った1枚も合わせて、6枚配置しました。

最後に、ついでに掃除していたドラムを再度組み立て、ドラムPCやミキサーを配置し、配線して、ようやく新しいディスクふにゃふにゃシステム付き電子ドラム環境が完成しました!

効果

数値で検証したわけではありませんが、効果は十分にあると感じます。

最初に述べたとおり空気伝搬音は改善しませんが、固体伝搬音についてはかなり効果があります。また、タイヤチューブに比べてバランスディスクは揺れも控えめで気になりません。そして最大のメリットは、本来の用途からしてバランスディスクは容易にパンクしないこと、すなわちメンテナンスフリーであることです。まあ、前述の通り12年が経過した時点で空気を少し補充しましたが、放置していても特に問題はなかったと思います。

ちなみに、ここまで言うと無責任になるかも知れませんが、私はタイヤふにゃふにゃシステムを構築したときからずっとマンションの4Fに住んでいて、主に夕食後に1時間ほどドラムを叩いていますが、苦情はまだ来たことがありません。

ただし、ドラムの騒音問題はいろいろと根深いので、過信は禁物です。ディスクふにゃふにゃシステムを構築したにもかかわらず苦情を受けた等の報告がネット上でも散見されます。ディスクふにゃふにゃシステムを構築したあとも、周囲に十分な注意を払い、謙虚な姿勢でエレドライフを楽しみましょう。